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『ダル・レークの恋』 ー水ー

元旦の夜、スカイステージで2021年月組『ダル・レークの恋』ファースト・ランを観ました。

今回放映されたのは梅田芸術劇場シアター・ドラマシティの大千秋楽で、役替わりはクリスナ=夢奈瑠音、ペペル=風間柚乃という布陣。その前の東京・赤坂アクトシアター公演ではクリスナ=風間柚乃、ペペル=暁千星で、ライブ配信も発売されたブルーレイも東京公演だったので、風間柚乃のペペルがどんなだったかずっと気になっていました。……うーん、悪くなかったけど、どっちがいいかと言えば私は断然クリスナですね。カマラへの優しさがそのまま残酷さになる、あの月の場面はすばらしかった。風間クリスナが「ご覧」と言うと、ダル湖の水面に揺れる月が見えるようでした。

ちなみに、私が見た3本の『ダル・レークの恋』ではクリスナは風間柚乃、ペペルは稔幸がベストかな。

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今回あたらめて感じたのは谷貴矢演出の見事さ。中でも、全編を貫くモチーフとして<水>を置いたことです。ダル湖に湛えられた水は聖なる河へと流れ、海へ注いで、やがて遠いパリの舗道を濡らす雨となる。水はまた霧となり、偽りの恋人たちの朝のしとねを濡らし、知らない街にひとりたたずむ男の姿をつつむ。……

絶えず変化して、定まったかたちを持たない水は、マハーラジャの息子から夜のパリで顔を知られた無頼漢へ、無頼漢から百姓の倅であるインドの騎兵大尉へ、さらには前科12犯の詐欺師ラジエンドラへと移ろっていくラッチマンその人であり、ラッチマンの(見せかけの)変化のたびに激しく揺れるカマラの心そのものです。水は変化するけれど、その本質は変わらない。カマラはそれがわからなかったか、わかっていても信じることができなかったのですね。

谷貴矢先生は水の精たちのダンスによって、この<水>のモチーフを幻想的に表現しました。『ダル・レークの恋』に限らず、菊田一夫先生の脚本にはある種の<下世話さ>があるのですが(そしてそれが魅力のひとつでもありますが)、谷貴矢演出はその下世話さを残したまま<水>のモチーフで再構成することで、現代のタカラヅカのお芝居として昇華させたように思います。


歌舞伎座にて

先週の水曜日は歌舞伎座でした。第一部の『伊達の十役』は猿之助の十役早替わりが売りで、朝の回というのに客席は8割方埋まっていました。

開演10分ほど前に席について、のど飴を出したりオペラグラスを合わせたりしていると、通路を隔てた席から「ねえ、これアサドリさんから貰ったのよ」という女性の声が聞こえました。

「アサドリさん?」
「カン様」
「ああ、カン様」

さりげなく振り向くと、声の主は70年配の女性でした。私の席からは彼女の手元は見えなかったけれど、何か観劇のときに使うものを連れの女性に見せているようでした。

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私が宝塚を見始めた子供時代、麻鳥千穂さんは宝塚の大スターでした。色が白くて、すらりとした長身で、歌がとても上手で——。愛称はカンさま。ニックネームをちゃん付け、さん付けで呼ばれるスターさんが多いなか、麻鳥千穂さんだけはカンさまでした。さま付けで呼んでぴったりの大人っぽさと、優しさと、(こういう言い方はおかしいのかもしれませんが)何というか、徳の高さみたいなものを感じさせるスターさんでした。

今「カンさま」というと初風諄のこと。「フランスの女王なのですから」の決め科白とワンセットで、そりゃあさま付けで呼ばないと収まりが悪い。でも私には初風諄は今も昔もカンちゃんなんですよね。カンさま、だと別の人のことになっちゃう。

アサドリさんから貰ったのよ、と言ったあの女性はカンさまに近いファンだったのでしょうか。それとも(そういう雰囲気はあまり感じられなかったけど)往年のタカラジェンヌ? 
いずれにしても、スターさんから貰ったプレゼントをずうっと大切にして今も使っているなんてステキです。それだけの長い時間、夢が続いているってことですから。




『ヴェネチアの紋章/ル・ポァゾン 愛の媚薬 -Again-』

ライブ配信を観ました。言葉の香気の消え失せたお芝居と、毒気の抜けたぬるいレビューでした。でもそれは演者のせいではありません。

『ヴェネチアの紋章』は柴田作品としては出来のいい方ではないと思いますが、それでも随所に<らしさ>はありました。たとえばエピローグ、大浦みずき扮する青年が恋人を追って駆け抜けていくシーンの爽やかな詩情。——ここまで変えるのなら、脚本:柴田侑宏というクレジットは外すべきではないでしょうか。

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今回いちばん印象に残ったのは、オリンピアを演じた夢白あやです。声も顔も今主流の可愛い系ではない、大人っぽい娘役さん。白羽ゆりに雰囲気が似ています。
いつか彼女のグルーシェニカで『カラマーゾフの兄弟』を再演してくれないかしら。彩風咲奈はドミートリーできると思うんだけどな……



明日は『ダル・レークの恋』♪

明日は月組・赤坂ACTシアター公演『ダル・レークの恋』の千秋楽。観たかった公演ですが上演期間と緊急事態宣言期間が重なったので生観劇は諦め、自宅でライブ配信を楽しみます。

予習のため、録画してあった1997年星組版(麻路さき×星奈優里)と2007年月組版(瀬奈じゅん×彩乃かなみ)を見ました。いちばんビックリしたのは、かの有名なベッドシーンが上田久美子先生の『金色の砂漠』のベッドシーンにやたら似ていたこと——もちろん順序は逆さまです(笑)。影響を受けたんでしょうね、きっと。
そのほかにも構成上の類似点が多くて、でも作品が内包する思想はまったく正反対で、いろいろと考えさせられました。

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『ダル・レークの恋』は、気位の高さゆえに女の愛を試した男と、誇り高さゆえに男の愛を退けた女の、罪と罰の物語です。明瞭で色褪せない主題、華やかな舞台設定(ダル湖とパリ!)、緻密な構成、めくるめく展開——これぞタカラヅカ! ああ、生で観たかったなあ……


星組版と月組版では、私の好みは麻路さき主演の星組版。スケールが大きく、気品があり、骨太で繊細、<美丈夫>という言葉がぴったりのラッチマンでした。菊田一夫先生が春日野八千代に宛てて書いた宛書き作品ですから、ラッチマンは演じるスターを選びます。そしてここ10年ほどのタカラヅカで、美貌でも、気高さでも、演技力や歌唱でも、今現在の月城かなとほどラッチマンにふさわしいスターは見当たりません。


三度目の再演となる今回は、演出に若手の谷貴矢先生が入られるのも楽しみのひとつです。
谷先生の『出島小宇宙戦争』は、ヒロインが愛するのが鳳月杏演じる主人公ではなく、そのライバルでもなく、主人公の師匠である老人、という画期的な設定でした。愛に垣根がないのなら、ヒロインの愛する人が酒飲みのぐうたら老人だっていいじゃないか——新鮮で意表を衝くこの発想は、タカラヅカの取り扱う<愛>の領域を同時代に合わせて、確実に広げてくれたのではないでしょうか。

今回、谷先生はストーリーにはあまり手を加えず、ショー部分を新しくしたようです。観劇した友人の話では、下級生がたくさん登場するエピローグがとてもいいそうなので期待しています。








ことばの泉、ですって。

マルさん(那智わたる)の写真目当てでスカステ「名作 ことばの泉『シャングリラ』」を見ました。……ちょっとひどい。

「入内(じゅだい)」を「にゅうだい」と読む。
「木のまがくれ(このま・がくれ=木の間隠れ)」を「きの、まがくれに」と読む。

意味を知らずに読んでるのか? <まがくれ>って言葉があると思ってるのか? 
「ことばの泉」というタイトルが恥ずかしすぎる。

指導者をつけてください。知らない言葉は辞書くらい引いてください。



プロフィール

にゃん魚

Author:にゃん魚
   (猫魚/nian-ghio)
       ・
■OGは……■
矢代 鴻, 大浦みずき, 彩吹真央
■現役は……■
月城かなと, 天路そら, 風間柚乃
■取扱いは…■
宝塚歌劇とその周辺。かなり広範。

ネタバレは普通にあります。

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